カンガが東アフリカ沿岸部、スワヒリ社会の女性たちに着用されるようになったのは1880年代ごろであろうと考えますが、それ以前にスワヒリの女性たちの間で流行した巻き布が「レソ」と呼ばれるものです。
これはポルトガルからもたらされたスカーフを女性たちが自ら6枚分縫いあわせて、巻き布としたもの。
その後、この布はヨーロッパでも作られ、一時はとても人気があったのですがカンガがヨーロッパから入ってくると、レソは、東アフリカでの人気は凋落。
1890年代になるとマダガスル北部に細々と輸出されていました。
現在では、コモロ諸島の女性たちがレソと同様の布を着用しています。
東アフリカでは、私の聞き取り調査では1970年代くらいまこのレソを見ることができたということで、現在ではすたれたと考えておりました。
しかしながら、昨年11月にザンジバルでレソを着ている人を発見。
その人は友人からもらったと話していましたが、私がどこかで売っていないかと尋ねるとその周りの人々も協力してあるお店に連れて行ってくれました。
その店ではわずか一点しか残っておらず、金糸の飾りが施された一枚を入手しました。
その店の店主はレソという名称は知らず、この布のことをカンガと呼んでおりました。
モンバサなどのケニア沿岸では、カンガという言葉よりレソという言葉のほうがよく通じることが多く地域差が感じられます。
実は、その前にナイロビの古文書館で、スワヒリの交易の歴史コーナーにレソを着用している女性の写真が飾られているのを見ており、学芸員に確認したところ、沿岸部のどこかで撮影されたものということ。
撮影時期もさほどは古くないということでしたので、はたしてどこかにまだ現存するのだろうと考えていたところでした。
入手したものは、モチーフの輪郭に沿って金糸が飾られているとてもゴージャスなものです(写真のものが六枚分つながっています)。